酒場放浪記 [エッセイ]
掲題はテレビの番組名である。
BS―iでの放送なので余り馴染みがないかも知れない。
「吉田類の酒場放浪記」が正式番組名である。
TVの番組欄で見つけたとき吉田類とは女性と勝手に思い込んだ。
酒場巡りのエピソードを、酒や肴にまつわる話を女の目で、
それもちゃらちゃらしないで、飲んで酔い切り込む今までにない番組、
好企画と勝手に思っていた。
出てきたのは失礼ながら何処にでもいる五十過ぎのおっさんが酒を飲んでいた。
儚くもでも良い意味で期待を裏切られた。
オヤジや女将や常連客との会話、酒肴や創業当時の話題、
カウンター越しでの乾杯、タイミング良く他人の肴を半ば強引に貰いに行く箸の動き、
お決まりで客に質問するその店の旨いモンの話などなど楽しい。
見ていると煙りや臭いが茶の間に居ることを忘れさせ賑わいの中で味わっているようになる。
酔っぱらって呂律が怪しくなった吉田類のつっこみに為らない突っ込み不足、
中途半端さが笑えてしまう。
もっと楽しいのはそれをナレーションの河本邦弘が突っ込むタイミングが絶妙である。
いじくられるのである。
放送時間が自分の生活と合わないので録画しておく。
最近は二本まとめて放送するようになった。再放送が増えた?が、
でも酒を飲みながら家族で楽しんでいる。
他の客が注文した肴ができあがると「取りに行くよ!またやったよこのオヤジ」などと、
「何だよ今日はもう酔っぱらっているよ」などと、
自然に声が出て来るくらい我が家には浸透している。
僕はこの番組を肴に酒を飲んでいる。酒場を求めて彷徨い歩くことはしない!
番組最後の酒に関わる俳句が良い。
あぐら酒うちわ翻(かえ)して夢一文
闇海(くらうみ)を孕みつ喰はる蛍烏賊
背徳のほろ苦き夏の夕
(酒場歳時記・吉田類著から)
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